古い町並み

出格子（でごうし）が続く軒下には用水路が流れ、造り酒屋の軒先には杉の葉を玉にした「酒ばやし」が吊り下がるなど、まるで江戸時代にタイプスリップしたかのような光景の飛騨高山の古い町並は、国選定の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。特に、昔ながらの宿や商店などが集まる上二之町や上三之町には、優れた町並みと自然に調和した景観づくりにふさわしい建築物等を表彰する「景観デザイン賞受賞」の木札を掲げる建物も多くあります。

笑顔で人力車を引く俥夫（しゃふ）の姿が絵になる飛騨高山。今や京都や浅草など日本の有名観光地でもみられる光景ですが、飛騨高山の人力車は1970年から走っており、全国の観光人力車の元祖ともいわれています。プロの俥曳きが高山の歴史を語りながら古い町並みを案内してくれることはもちろん、徒歩観光とは違った目線での町並の景観を楽しんでみてはいかがですか？

飛騨牛、朴葉みそ、みたらし団子など…風情ある町並みだけでなく、ご当地グルメの食べ歩きが楽しめるのも飛騨高山観光の魅力のひとつ。実はこれらを食せるお店は古い町並に集結していて、散策するだけで網羅することができるんです。中でもオススメはえびせんべいに乗った高山スタイルの飛騨牛のにぎり寿司。手軽に頂けるだけでなく、お皿の代わりのえびせんべいも最後まで美味しく味わえるので、食べ歩きもぜひ楽しんでみてください。

高山には7軒の酒蔵があり、飛騨山脈を源流とした水や米で作られた地酒が有名です。古い町並の各所にも様々な酒蔵があり、おちょこを買っての試飲で飛騨のご当地の日本酒の飲み比べもできちゃいます。町のそぞろ歩きで飲み比べを楽しむのはもちろん、気に入ったお酒は購入して宿に持ち帰ったり、お土産にして自宅で味わって旅の思い出を振り返るのも良さそうですね。

高山といえば、毎年春の4月14〜15日、秋の10月9〜10日に行われる「高山祭」が有名で、この2つはあわせて日本三大美祭のひとつに挙げられています。ユネスコ無形文化遺産に登録されたこのお祭りでは、飛騨の匠の技を伝える豪華絢爛な屋台が勢揃いし、昔の装束をまとった祭行列や、屋台の曳き揃えなど、圧巻の雰囲気を楽しめます。特に、それぞれ約100個もの提灯を灯した各屋台が町をゆっくりと巡る初日の夜のお祭りは、昼とはまた違う幻想的な雰囲気も楽しめるので、鑑賞する場合は夜祭を見逃さないように、短時間で早めの時間に夕食を取って向かうのがお勧めです。

高山にゆっくり滞在できるなら、夕方〜夜の古い町並の景観も楽しんでみませんか？飛騨高山の古い町並は、ランチのみ営業のお店が多く、居酒屋やディナー営業のお店は少ないため、17時以降は実はお店がどんどん閉まってしまいます。そのため、決して夜の活気を楽しむ場所ではありませんが、ほとんど人がいない静かでしっとりとした雰囲気を味わえるのが違った魅力を醸し出します。ぼんやりと照らされた古き良き町を歩いてみると、現代の夜には中々味わえない神秘的な雰囲気を感じることができるかもしれませんよ。

高山を歩くと必ず目に入るのが、お腹に文字が描かれた飛騨地方に古くから伝わる赤い人形「さるぼぼ」です。その昔、雪深い飛騨でおばあちゃんが子供たちのために作ったのが始まりとされ、子宝・安産のお守りとしての効果はもちろん、また、災いが去る（猿）、良縁、家内円満などの縁起物のお守りとしても親しまれています。 元々は赤色ひとつでしたが、さまざまな色やサイズの「さるぼぼ」が登場しているので、旅の思い出に持ち帰ってみるのも良さそうですね。

高山の古い町並は、最寄りの高山駅から歩いて約15分の距離ですが、駅近くのレンタサイクル屋さんで自転車をレンタルし、周辺観光がてら自転車旅を楽しんでみるのもお勧めです。特に、高山駅前近くの高山陣屋から宮川朝市や古い町並み周辺は坂道もなく平坦なので、徒歩より行動範囲も広がり、スイスイ回ることができます。ただし、町の中心部や、シーズンにより人が溢れているところもあるので、レンタサイクルは拠点間の移動に限って利用するよう心がけましょう。